週末

志村正彦のいる頃のものばっかりやが、もうかれこれ10年以上ずっとフジファブリックを聴き続けている。

『桜の季節』なんか最高で、平成の臭いが快い。

最近流行り廃りに弄されるのがめっきりしんどくなってきて、同じ音楽ばっかり繰り返し聴いている。そうやって年寄りになっていくんやなと思う。

というか自由とか青春とかそういうものは実はもう全部終わっていて、おれはもう懐古と自己内省を繰り返すただの老人になってしまっていた。

 

おれはいつもあの夏を思い出す。

おれは原付に跨がり、県道1919号線を時速310kmでブッ飛ばしていた。死に損ないのツクツクボウシがやたらやかましい。

このままじゃ夏の葬式に遅れてしまう。畦に彼岸花が咲いちまうぜ…そんなことを考えながら平成ゆとりヶ峠トンネルに突入すると、金木犀のにおいがギュウギュウに詰め込まれていた。

夏は死んだのだ。

おれの肺は一瞬で焼けて腐り落ち、息ができなくなって死んだ。

 

 

おれは冬が嫌いだ。

何もせずジッとしている必要があるからだ。

それは飽くなき自己内観の季節を意味する…行動なき理論は無、

何もせずとも時は経つ。

誰にも読まれなくともツイートは流れていくし、戸田恵梨香の前髪は薄くなっていく。

変わらんのは本田翼の演技力だけやんな。

 

 

しょうもないことを考えながらまた全く飲む必要のないストロングゼロを飲んだ。

夢と現実の境界が揺らぐ瞬間をただただ待っていた。

ストーブが灯油を飲み込む音がした。

同時にどこからともなく聞き覚えのある曲が聴こえてくる。

 

〽︎その街に繰り出してみるのもいい、桜が枯れた頃…

 

 

腹が減った。

生きていると腹は減る。

何もせずとも時は経つ。

油臭いボロストーブの前で震えながら、おれはただひたすら冬が過ぎるのを待っている。